インターネットの普及により、消費者の購買行動は大きく変化しました。この変化を反映したAISCEASモデルは、従来のAIDMAモデルを拡張し、検索、比較、検討、共有といった新たなプロセスを組み込んでいます。
例えば、検索段階では消費者が価格比較サイトやランディングページを活用して情報を収集する様子が見られます。
このモデルを基に、消費者の行動を詳細に把握するためのアンケート調査を設計する際、各ステージに応じた質問を用意することが重要です。以下、AISCEASモデルの各ステージに沿って、効果的な質問例とその設計のポイントを紹介します(^^♪
Attention(認知・注意)段階
認知段階では、消費者が商品やサービスに初めて接する瞬間を捉えることが重要です。この段階での質問は、消費者がどのようなメディアを通じて商品を知ったか、どのような頻度で情報に触れているかを明らかにします。
- 当社の商品/サービスをどのようなメディア(テレビCM、ウェブ広告、SNSなど)で初めて知りましたか?
- 当社のブランドや商品に気づいたきっかけは何でしたか?
- 広告や情報に接する頻度はどの程度ですか?
Interest(興味・関心)段階
興味段階では、消費者の関心を引いた具体的な要素を特定することが目的です。商品の機能、デザイン、価格など、どの側面が消費者の興味を惹きつけたのか、また、その興味の度合いを測ることが重要です。
- 当社の商品/サービスのどのような点に興味を持ちましたか?(機能、デザイン、価格など)
- どのような特徴やベネフィットがあなたの関心を引きましたか?
- 興味を持った後、どのような方法で詳細情報を収集しましたか?
- 他の類似商品と比べて、この商品に特に魅力を感じた点は何ですか?
- 当社の商品/サービスに対する興味度を1〜5段階で評価してください。
Search(検索)段階
検索段階では、消費者の情報収集行動を詳細に把握します。使用したキーワード、利用した情報源、主に使用した検索エンジンなどを尋ねることで、消費者の情報探索プロセスを明らかにできます。
- 当社の商品/サービスについて検索する際、どのようなキーワードを使用しましたか?
- この商品について調べる際、どのような情報源を利用しましたか?(例:公式サイト、口コミサイト、SNSなど)
- 主にどの検索エンジンやプラットフォーム(Google、Yahoo、Amazonなど)を利用しましたか?
- 検索結果のうち、どのような情報が最も役立ちましたか?
- 「購入前にどの程度の時間をかけて情報を調べましたか?
Comparison(比較)段階
比較段階では、消費者が他の選択肢とどのように商品を比較したかを理解することが重要です。比較の際に重視した項目、使用したツールや方法、比較にかけた時間などを尋ねることで、消費者の意思決定プロセスをより深く理解できます。
- 他社の類似商品/サービスと比較する際、どのような項目を重視しましたか?(価格、機能、ブランド力など)
- 比較にはどのようなツールや方法を使用しましたか?(比較サイト、口コミ、友人の意見など)
- 他の選択肢と比べて、この商品を選んだ理由は何ですか
- 比較検討にどのくらいの時間をかけましたか?
Examination(検討)段階
検討段階では、消費者が商品やサービスを精査する過程を探ります。サンプル使用やトライアルなどの方法、考慮した要因、重視した情報などを尋ねることで、購入決定に至るまでの詳細なプロセスを把握できます。
- 購入を検討する際、どのような方法で商品/サービスを精査しましたか?(サンプル使用、トライアル、デモなど)
- 購入を決めるまでにどのような要因を考慮しましたか?
- 検討段階で最も重視した情報は何でしたか?(ユーザーレビュー、専門家の意見、実際の使用感など)
- 購入を迷った理由や不安に感じた点は何ですか?
- 検討段階で不足していた情報はありましたか?あれば具体的に教えてください。
Action(購買・行動)段階
購買段階では、最終的な購入決定の理由や購入プロセスの詳細を明らかにします。利用したチャネル、購入プロセスの利便性、改善点などを尋ねることで、購買行動の全体像を把握できます。
- 最終的に購入を決定した理由は何ですか?
- 購入にはどのチャネルを利用しましたか?(オンラインストア、実店舗、アプリなど)
- 購入プロセスで特に便利だと感じた点、または不便だと感じた点は何ですか
- 購入プロセスで改善が必要だと感じた点はありますか?
- 購入時に特典やキャンペーンが影響しましたか?
Share(共有)段階
共有段階では、購入後の消費者行動に焦点を当てます。商品やサービスについての口コミやSNSでの共有行動、その理由や内容を尋ねることで、ブランドの評判形成プロセスを理解できます。
- 購入後、この商品について誰かに話したり、SNSで共有したりしましたか?
- 共有した場合、その理由は何ですか?(例:満足感、驚き、期待以上の価値など)
- 購入後、商品/サービスの感想をどのような方法で共有しましたか?(SNS、口コミサイト、友人との会話など)
- どのような内容を共有しましたか?(評価、使用感、写真など)
- 他の人におすすめしたいと思いますか?その理由も教えてください。
質問設計のポイント
効果的なアンケート調査を設計するには、まず具体性を持たせることが重要です。回答者が答えやすいように、選択肢や具体例を提示することで、より正確な回答を得られます。
次に、オープンエンドとクローズドエンドの質問をバランスよく組み合わせることです。自由回答形式と選択肢形式を適切に使い分けることで、深い洞察と比較可能なデータの両方を得ることができます。
最後に、質問内容をターゲットとなる消費者層に適応させることです。年齢、性別、購買行動などの特性に合わせて質問を調整することで、より的確な回答を引き出せます。
これらの質問例とポイントを参考に、AISCEASモデルに基づいたアンケート調査を実施することで、消費者の購買行動プロセスを詳細に把握し、各ステップに応じた効果的なマーケティング戦略を立案することができます。消費者の行動を深く理解することは、ビジネスの成功に不可欠な要素であり、このようなアプローチを通じて、より顧客中心のマーケティングを実現することが可能となるのです。
参考文献
書名:マーケティングリサーチとデータ分析の基本
著者:中野崇
発行所:株式会社すばる舎
発行年月日:2018年4月24日
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