2024年11月、東京ビッグサイトで開催されたJIMTOF2024(日本国際工作機械見本市)に参加しました。本イベントは、工場での製造工程の改善案につながる製品の調査や最新の工作機械、工具類、周辺機器の技術動向を調査する絶好の機会となりました。
イベント概要
JIMTOF2024は過去最大規模の開催となり、1,262社が出展しました。会場は以下のように分かれていました。
- 東ホール:主に工作機械の展示
- 西ホール:工具類関連の展示
- 南ホール:工作機器やその他関連機器の展示
注目の技術トレンド
ギガキャスト技術
自動車業界で注目を集めているギガキャスト技術に関する展示が多く見られました。
- ヤマザキマザック:横型マシニングセンタ「FF-1250H」
- コマツNTC:「KV420L」
- FANUC:多関節ロボット「M-1000/550F-46A」(ギガキャスト向け段取り装置)
多関節ロボットのエンドエフェクターに主軸を取付け穴加工できるシステムなどもFANUCやスギノマシン、桜井製作所にて展示されていました。
これらの展示から、金型の大型化が進んでおり、2025年以降にギガキャストの本格導入が予想されます。
AM(Additive Manufacturing)技術
DMG森精機、ヤマザキマザック、松浦機械製作所などが展示を行っていました。AM技術の主な活用分野は、
- 自動車産業:部品試作
- 航空宇宙産業:複雑形状部品の製造
従来の切削加工技術とAM技術を組み合わせることで、より効率的で革新的な製造プロセスの実現が期待されています。
注目の製品と技術
高出力ファイバーレーザー加工機
アマダの「REGIUS-3015AJe」は、ビーム出力を12kWから26kWに向上させました。これにより、軟鋼の酸素切断条件で最大板厚50mmまで対応可能になったそうです。
自社開発の高性能発振器を核とする革新的な技術を特徴とし、高輝度のシングルモジュールエンジンを開発によりビーム品質を向上させたとのことです。
加工技術面では、「ソフトジョイント」と呼ばれる独自の方法を採用しています。これは薄板を切り抜く際、4辺にスリットを加工することで、熱ひずみを利用してワークを固定しつつ、取り外しを容易にする技術とのことで、バリ取り作業が不要となり、これにより作業効率が大幅に向上します。
これらの技術革新により、アマダのレーザー切断機は高速・高精度な加工と操作性の向上を両立し、市場での競争力を強化しているようです。
クーラント自動供給装置
岩本工業の「楽〜ラント」は、以下の特徴を持つ革新的な装置です。
- 本体価格:約350万円
- 供給可能台数:最大40台
- 機能:タンクの水量減少を自動検知し供給
- 期待される効果:クーラント供給作業の工数削減、濃度管理自動化、給水忘れによる工具破損防止
搬送装置と特注工作機械
桜井製作所は、ガントリローダやコンベヤ、ロボットを用いた搬送装置の設計・製作を行っています。工作機械事業部では、標準機から専用機まで幅広い製品ラインナップを持ち、ロータリーフライス盤、多軸マシニングセンタ、バリ取りマシンなどが代表的製品です。単体機械から大型ラインシステムまで、顧客ニーズに応じた提案型アプローチを実現しているとのことです。また、開発から設計、製作、組立、メンテナンスまでの社内一貫生産体制により、納期短縮とコスト削減を実現しているようです。
3次元フォトグラメトリシステム
ミツトヨの「V-STARS」は、大型構造物を高精度で測定するシステムです。
測定箇所に取り付けたターゲットポイントを専用のデジタルカメラで撮影し、各ポイントの三次元座標値を算出します。最高精度のプラチナモデルは、4mサイズの対象物で25μmの精度を実現。約1200万画素のセンサーと電子シャッターを搭載し、専門知識がなくても簡単に操作できる特徴があります。大型製品の品質管理や建設現場の測量など、幅広い分野で活用されているとのことです。
会場内のおすすめ移動方法
さすがに最大規模の展示ということもあり全ての会場を歩いて回ると疲れてしまいます。
各展示ホールを回るシャトルバスも運行されていますので、次回開催の際などは積極的に活用することをおすすめします。
冊子やカタログなどを入手した後であれば、バス乗車中に内容を確認できるため移動も兼ねることができ一石二鳥です。
りんかい線の国際展示場駅からもバスが出ており、東ホールと南ホール経由で周回していました。
駅を出て左方向に向かった先にシャトルバスの停車場がありました。他の人と同じ流れで行くと右方向のビッグサイト方面に歩きで行くことになるため、一度立ち止まってバス停を探した方が良いと思います。
まとめと感想
JIMTOF2024を通じて、製造業界の最新トレンドや技術動向を把握することができました。ギガキャストやAM技術の進展、高性能工作機械の登場、そして効率化を図る周辺機器の開発など、製造業の未来を垣間見ることができました。これらの情報は、今後の改善活動や設備投資の検討に大いに活用できるでしょう。
また、BtoB業界におけるデジタルマーケティングの重要性も再認識しました。配布されていた冊子では、タンガロイのコミュニティサイトの紹介がされており、「ユーザー理解を深める」、「顧客とダイレクトにつながったことで開発部門や製造部門など、これまで直接接点がなかった社員のモチベーションが上がった」などの効果があったとのこと。他の工具メーカでも、住友電工ハードメタルではSNS登録募集などを行っているなどあり、BtoCだけでなくBtoB業界でもSNS等を活用したマーケティングや情報収集による商品開発への活用が一般的で有効な手法になっているのだろうと感じました。
今回の見学で得た知見を、自社の製造プロセス改善や競争力強化に活かしていきたいと思います。
コメント