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【ゼロ・トゥ・ワン要約】 新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか?

ビジネス勉強会

「ゼロ・トゥ・ワン ~君はゼロから何を生み出せるか」はピーター・ティール氏がスタンフォード大学の学生向けに行った企業に関する講義内容をもとに書かれた本です

ピーター・ティール氏はオンライン決済システムであるペイパルの共同創業者であり、創業初期のMeta(旧Facebook)やスペースXなどのスタートアップへの出資を行う投資家としても有名な方です

以下に各章のキーセンテンスをまとめましたので、本書を実際に手に取り熟読する際の参考にしていただければ幸いです

はじめに

人類には軌跡を起こす力がある それを「テクノロジー」と呼ぶ

「テクノロジー」はより少ない資源でより多くの成果の可能にしてくれる

起業には多くのパターンがあるが、成功の方程式はない

ひとつだけ際立ったパターンがあるとすれば、成功者は方程式ではなく第一原理から ビジネスを捉え、思いがけない場所に価値を見出しているとういことだ

僕たちは未来を創ることができるか

「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」

正しい答えは「世の中のほとんどの人はXを信じているが、真実はXの逆である」となる

未来とは、まだ訪れていないすべての瞬間、そのときに「世界が今と違う姿になっている」

未来は今と違う、だけど未来は今の世界がもとになっている

進歩は「水平的進歩」「垂直的進歩」の2つの形のどちらかになる

水平的進歩(拡張的進歩):成功例のコピー、1からnへ向かうこと、想像しやすい、グローバリゼーションのこと

垂直的進歩(集中的進歩):新しい何かを行うこと、0から1を生み出すこと、想像することが難しい、テクノロジーのこと(ものごとへの新しい取り組み方、より良い手法も含まれる)

資源の限られたこの世界で、新たなテクノロジーなきグローバリゼーションは持続不可能

大組織の中で新しいものは開発しづらく、独りではさらに難しい

官僚的な組織は動きが遅い、孤独な天才は産業を丸ごと想像することはできない

スタートアップではチームで働くことが原則的で、かつ実際に仕事をやり遂げるにはそれを少人数にとどめる必要がある

スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ

1999年のお祭り騒ぎ

ドットコム・バブルの崩壊とともにテクノロジーに代わってグローバリゼーションが未来の希望となった

シリコンバレーに居残った起業家は、ドットコム・バブルの崩壊から四つの大きな教訓を学び、いまだにビジネスを考える際の大前提となっている

1. 少しずつ段階的に前進すること

壮大なビジョンがバブルを膨張させた

小さく段階的な歩みだけが、安全な道だ

2. 無駄なく柔軟であること

すべての企業は「リーン」でなければならず、それは「計画しないこと」である

計画を立てるのは傲慢であり、柔軟性に欠ける

試行錯誤を繰り返し、先の見えない実験として起業を扱うべきである

3. ライバルのものを改良すること

既存顧客のいる市場から始めるしかない

人気商品を改良することから始めるべきだ

4. 販売ではなくプロダクトに集中すること

テクノロジーは製品開発にこそ活かされるべきで、販売は二の次でいい

むしろ正しいのは、それとは逆の原則である

ピーター・ティールの主張は上記4項目とはまったく異なり、バブル後に刷り込まれた教義を捨てることだと言う

1. 小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい

2. 出来の悪い計画でも、ないよりはいい

3. 競争の激しい市場では収益が消失する

4. 販売はプロダクトと同じくらい大切だ

(意見)ブルーオーシャン戦略

ただしすべてを逆にすればうまくいくというわけでもない

逆張りは、大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ

幸福な企業はみなそれぞれに違う

先の質問をビジネスに当てはめると「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」となる

大きな価値を生み出すだけなら、企業自体が価値ある存在でなくても可能、企業は価値を創造するだけでなく、創造した価値の一部を社内にとどめなければならない

完全競争下では全ての収益が消滅するため、永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行ってはならない

カネのことしか考えられない企業と、カネ以外のことも考えられる余裕のある企業とでは、ものすごい違いがある

長期的な未来に備える余裕があるか?

独占的資本主義では、クリエイティブな独占はより良い社会を作る強力な原動力になっている

独占を約束されることがイノベーションへの強力なインセンティブとなる

幸福な企業は、それぞれが独自の問題の解決することで、独占を勝ち取っている

イデオロギーとしての競争

競争とはイデオロギーである

イデオロギー:社会や政治に関する思想、観念のこと

競争の必要性を正当化し、その教義を実践しようとするため、自信が競争の中に捕らわれてしまう

学生の競争力を成績でハッキリ評価する

社員は出世のためにライバルとの競争に執着する

企業もまた市場の競合他社に執着する

人は本質を見失い、ライバルばかりを気にするようになる

新しい何かを創り出すことは競争とは別のところにある

終盤を制する(ラストムーバー・アドバンテージ)

偉大な企業かどうかは、将来のキャッシュフローを創出できる能力で決まる

単純に言えば、今日の企業価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの総和だ(正確には、未来のキャッシュフローを現在価値に割り戻さなければならない)

価値ある企業となるには、成長するだけでなく存続しなければならないのに、多くの起業家は短期的な成長しか見ていない

遠い未来に大きなキャッシュフローを生み出す企業は、次の特徴のいくつかを持ち合わせている

1. プロプライエタリ・テクノロジー

プロプライエタリ:製品やシステムの仕様や企画、構造、技術を独占的に保持し、情報を公開していないこと

2番手よりも10倍は優れていなければならない

全く新しい何かを発明するか、既存のソリューションを劇的に改善するか

2. ネットワーク効果

利用者の数が増えるにつれ、より利便性が高まるもの

矛盾するようではあるが、ネットワーク効果を狙う企業は、小さな市場から始めなければならない

小さな市場の方が支配しやすい

3. 規模の経済

独占企業は規模が拡大すればさらに強くなる

多くの企業にとって、規模の拡大によるメリットは限定的

規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込むのが、優良なスタートアップ

ニッチ市場を創造し、支配したら少し大きな市場に徐々に拡大していくべき

4. ブランディング

強いブランドを作ることは独占への強力な手段となる

本質よりブランドから始めるのは危険

ブランディングだけではテクノロジー企業は築けない

ラストムーバーになる

先手を打つのは手段であって目的ではない、後からライバルがやってきてその座を奪われたら意味がない

特定の市場で一番最後に大きく発展し長期的に独占利益を享受する方が良い

小さなニッチを支配し、長期目標に向けて規模を拡大しなければならない

人生は宝クジじゃない

成功が単なる運とも言い切れない

あいまいな楽観主義者は、未来は今より良くなると思っていても、どんな姿になるのかを想像できず、具体的な計画を立てることはない

あいまいな楽観主義はそれ自体矛盾している 誰も計画を持たないのに、どうして未来が良くなると言えるのだろう?

起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる それは「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる

カネの流れを追え

カネはカネを生む

アーリーステージへの投資によって指数関数的成長から利益を得ることを目論み、ほんの数社の価値が、ほかのすべての企業の価値をはるかに超える

僕たちは「べき乗則」のもとに生きているのだ

一般的には分散投資こそ力の源泉とされるが、起業家は自分自身を「分散」できない

一番大切なのは、「ひとつのもの、ひとつのことが他のすべてに勝る」ということだ

隠れた真実

「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」の正解は必ず、「隠れた真実」になる

なぜ僕たちの社会は、知られざる真実なんて残っていないと思い込むようになったのだろう?

4つの社会トレンドが隠された真実への探求心を根っこから摘み取ろうとしている

  1. 漸進主義:少しずつ順を追って進めるのが正しい
  2. リスク回避:他の誰もが信じていないことに人生を捧げるのはつらい、間違いたくない
  3. 現状への満足:過去の遺産でのうのうと暮らしていける
  4. フラット化:人々は世界を同質的で極めて競争の激しい市場と見なすようになっている

民主的な社会では、大半の人が不正義だと思わない限り、間違った慣習が続けられる

隠れた真実はまだ数多く存在するけど、それは飽くなき探求を続ける者の前にだけ姿を現す

偉大な企業は、目の前にあるのに誰も気づかない世の中の真実を土台に築かれる

隠れた真実には二種類ある

  1. 自然についての隠れた真実
  2. 人間についての隠れた真実

秘密を探すべき最良の場所は、ほかに誰も見ていない場所だ

ティールの法則

偉大な企業はいずれも独特だけれど、どの会社もいちばんはじめに正しく行っておかなくてはならないことがいくつかある

「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」という法則

もっとも重要な最初の決断は、「誰と始めるか」である

取締役会をきちんと機能させたければ、少人数にとどめることだ

スタートアップに関わるすべての人間はフルタイムでなければならない

現金報酬は未来より現在を優先させるものだ(CEOの給料が少ないほど会社はうまくいく)

スタートアップは自社の所有権を提供できる(自社株という報酬形態は、社員の意識を未来価値の創造へと向ける)

現金よりも所有権がいいという人は、長期的な志向があって、会社の将来価値を上げることにコミットしているとわかる

未来価値の創造に向けて人々を一致させるルールを作るチャンスは、そのスタートの瞬間にしかない

マフィアの力学

良い企業文化とはその姿を反映しているに過ぎない

他社と変わらない一般的な売り文句では、君の会社を選んではもらえない

スタートアップでは、中の全員がそれぞれまったく違う仕事で際立たなければならない

役割をはっきりさせることで、対立が減り、社内の競争をなくせば、長期的な関係を築きやすくなる

それを作れば、みんなやってくる?

いい製品を作れば魔法のように販路が開かれると勘違いしている

何か新しいものを発明しても、それを効果的に販売する方法を創り出せなければ、いいビジネスにはならない

ひとりの顧客から障害に得る純利益の平均総額(顧客生涯価値:CLV)が、ひとり当たりの新規顧客獲得費用の平均(顧客獲得コスト:CAC)を上回らなければならない

経営者は企業そのものを社員や投資家に売り込まなければならない

人間と機械

コンピュータは人間を補完するものであって、人間に替わるものじゃない

価値ある企業を創るのは、人間に力を与えようとする起業家だろう

人間の欲望は必要最低限のものでは止まらない グローバリゼーションが進むにつれ、需要は限りなく伸びていく

コンピューターはツールであって、ライバルではない 人間を補完する 人間の生産性を上げるものだ

エネルギー2.0

クリーンテクノロジー企業が破綻したのは、どんなビジネスも答えを出すべき七つの質問をなおざりにしたからだ

  1. エンジニアリング :ブレークするとなる技術を開発できるだろうか?
  2. タイミング :今が適切なタイミングか?
  3. 独占 :大きなシェアが取れるような小さな市場から始めているか?
  4. 人材 :正しいチーム作りができているか?
  5. 販売 :プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
  6. 永続性 :この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
  7. 隠れた真実 :他社が気づいていない、独自のチャンスをみつけているか?

誰も解決しようと思わない問題こそ、いちばん取り組む価値がある

テスラは七つの質問にすべて答えた企業でもある

逆説的だけれども、エネルギー2.0を生み出す起業家は、小さく考えることが必要になる

創業者のパラドックス

独創的な創業者は、有無を言わせず決断し、忠誠心を呼び起こし、数十年先まで計画できる

逆に、訓練されたプロフェッショナルが運営する個性のない官僚組織は、独りの寿命を超えて存続するけれど、目先のことしか見ていない

企業は、人々が創業者を必要としていることを自覚しなければならない

創業者は、個人の栄光と賞賛はつねに屈辱や汚名と背中合わせであり、慎重さが求められることを自覚しなければならない

停滞かシンギュラリティか

今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること ゼロから1を生み出すことだ

そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ

感想

いわゆる持続的イノベーションと破壊的イノベーションの話に置き換えると、本書では破壊的イノベーションに準ずるスタートアップを推奨しているように思う、一方で、すでに過去から継続している事業であれば短期的には持続的イノベーションで目の前の利益を取り、長期的には破壊的イノベーションにて既存プロダクトを自ら陳腐化させ、次の成長の礎を作ることが大事だろう

ただし「スタートアップが破壊にこだわることは、自分自身を古い企業の視点でみるようなもの」とも本書では言及されている 破壊や競争を避け、新しい価値の創造に着目すべきということで破壊的イノベーションはあくまで結果としての後付けの評価ということなのだろう

「カネのことしか考えられない企業と、カネ以外のことも考えられる余裕のある企業とでは、ものすごい違いがある」このことは企業だけではなく、個人にも当てはまる原理と思われる 長期的に稼ごうと思うのであれば個人としての成長・人的資本の増強に投資をするべき

短期的に利益を取れるようになるテクニックの解説というよりは、ある種の思想に近い内容であり、著者と対話することで人としての価値を上げる、長期的に見た自身の成長といった目的で見ても有益な書籍と言える

「隠れた真実」を探す方法として、リクルート社の事業開発の起点である「不の発見」という手法を活用するのが有効な方法の一つではないか?

「新しいビジネスは既存ビジネスと同じ尺度では評価できない」この事実を経営者が認識し、新規事業に対する判断を正しく行えるかがキーとなり得る 企業の価値が「将来のキャッシュフローを創出する能力で決まる」ということは判断の尺度としてNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)といった時間的な概念も考慮した上で評価・判断すべき

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