こちらは物理学者のエリヤフ・ゴールドラット博士によって書かれた本となり、制約条件に関する理論(TOC:Theory of Constraints)について書かれています
TOCはオペレーションズ・リサーチという学問体系の一種と考えられ、本書は「企業の究極の目的とは何か?」についてを論理的に解き明かしていく内容とも言えます
本書の概略
内容としては物語形式に話が進み、工場の所長であるアレックスが主人公となっています
小説のようにストーリーが進行していきますので、理屈めいたかたい内容の本が苦手な方でも比較的読みやすくなっています
主人公は赤字続きの工場を3ヶ月という短期間で立て直さなければならなくなり、恩師である物理学者ジョナに助言をもらいながら奮闘し課題を解決していくという流れになっています
同時に家庭内でも夫婦の不和が生じていて、こちらもどうなっていくのか?というのが見所です
ボトルネックの考え
この本の一番の本質と言えばやはりボトルネックの考えに行きつくかと思います
ボトルネックは言い換えれば 制約 もしくは 希少リソース とも表現できます
全体のスループットを向上させるためにはボトルネック工程の負担を減らす、もしくは底上げすることに注力しなければなりません
物語ではボトルネックとなる工場の機械の前に前工程から流れてきて待ち状態の材料が溜まっています
一方でロボットなどの最新技術をを導入して生産性を向上させている工程もあります
部分的にある工程の生産性を向上させても、次の工程がボトルネックになっている場合は全体としてはボトルネック工程の生産能力で頭打ちとなってしまいトータルのスループットが増えない
個々の機械の効率を上げようとすると常に機械を動かし続けることになるため仕掛品や在庫が増えていく、在庫が増えると管理や運搬の手間やコストが増えてしまい結果的に納期遅れやコスト増などによって企業としての利益を損なう結果となりえる
この内容はドラム・バッファー・ロープという考えでまとめられています
物語では主人公が子供たちとハイキングに行く際に説明されています
息子の友達のハービー君が重い荷物を背負っているため進みが遅く、後ろにはその他のメンバーが詰まった状態となっている
そして全員が到着しないとチームとしてはゴールできない
行列としては最も遅い人よりも早く進むことができないため、ここがボトルネックとなる
物語の中ではどうするかというと他のメンバーが荷物を少しづつ分けて持つことでハービー君の負担が減り、早く歩けるようになる
これでチーム全体としても早くゴールできるようになります
この話から導き出されるのは「希少リソース(制約)を助けることで全体が最適化する」という考えです
ボトルネック以外の非制約リソースの役割が変化することで、希少リソースを助ける
そうすると希少リソース自体は行動を変えていないにも関わらず全体としては効率が上がることになります
生産の流れ、もっと言うと仕事の流れは全て機械なり人なりの各リソース間のつながりとばらつきで成り立っているため、必ずどこかに制約が発生します
これをまず見つけることが重要で、見つけたらその希少リソースの負荷を軽減するように行動するという流れで改善を進めて行きます
待ち行列理論によるとある生産ラインの稼働率を100%に近づけようとすると、各機械の前に仕掛品が無限大に溜まってしまう
どの工程もばらつきがあるため、それを吸収することができないわけです
各機械の平均の生産能力で判断し、工程間をバランスさせて稼働率100%を目指すと逆にムダが増えてしまうというパラドックスが発生する
各工程では少なからずばらつきがあるため、後工程ではタイミングによっては手待ちが発生する
一度発生した手待ち時間は解消することができないため無限に積み重なってしまいます
一見すると合理的に思える判断が落とし穴となり得るのです
分かりやすい例の参考にリンクを貼っておきます↓
思うこと
コチラの著書は17年間 日本語への翻訳が禁止された本としても有名です
日本企業がこの本を参考に生産性を向上させてしまうことをアメリカが恐れたという逸話があります
それだけにこのボトルネックという考えは強力であり、生産性を向上させ利益を求める上では重要な考えと言えます
また、工場の話と並行して家庭の話も進行していく流れを見ると昨今の働き方改革をも考えさせられる内容かと思います
企業の目的は「利益を出し続けること」という結論ですが、そこで働く人たちの目的は豊かな生活を継続することとも言えます
この二つの目的を両立させるためには、そこに関わる人たちのモチベーションを高めることが基本となるように思います
コメント