外国人材の生活支援は、これまで「余裕があればやること」だったかもしれません。
ゴミ出しの説明、自転車のルール、病院のかかり方。どれも大事だとはわかっていても、本業が忙しいと後回しになります。
それでも、これまでは人が辞めにくい仕組みでした。
2027年4月から、その前提が変わります。
この記事では、育成就労制度で何が変わり、なぜ生活支援が「定着率そのもの」になるのかを整理します。制度の詳しい解説ではなく、受け入れの現場に関わる一点だけを取り上げます。
2027年4月、技能実習が終わり育成就労が始まる
2027年4月1日から、技能実習制度にかわって育成就労制度が始まります。
いちばん大きな変化は、本人の希望で職場を移る「転籍」ができるようになることです。
ただし、無条件ではありません。
- 最初の職場で働く必要がある期間が、1年から2年の間で分野ごとに決められます
- 分野ごとに定められた水準の技能と日本語能力が求められます
- 転籍できるのは同じ業務の区分の中だけです
- 転籍先は「優良」と認められた受け入れ先である必要があり、転籍元に一定の金額を支払います
つまり、簡単に移れるわけではありません。
ですが、出口ができたことは事実です。
住みにくい職場からは、人が出ていく
これまでは、生活支援がうまくいかなくても、人はそこにいました。辞めるという選択肢が、ほとんどなかったからです。
これからは違います。
ゴミ出しで近所から毎週のように注意される。自転車で警察に止められても、相談できる人がいない。具合が悪くても、病院のかかり方がわからない。
そんな場所に「ここで頑張ろう」と思える人は、多くないはずです。
仕事の指導に力を入れている会社は多いと思います。でも、実際に困ることが起きるのは職場の外、つまり寮と地域です。
1人が辞めると、会社には何が起きるか
人が抜けると、会社には次のような負担が生じます。
- 次の人を採用する費用
- その人にかけてきた教育の時間
- 慣れた人がいなくなったあとの、生産性の低下
誰がどこまで負担するかは契約や制度によります。それでも、受け入れた側に何らかの負担が出ることは避けられません。
一方で、生活支援の作業はひとつひとつが短いものです。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| ゴミの集積所まで一緒に歩く | 15分 |
| 指定のゴミ袋を一緒に買いに行く | 15分 |
| 夜の音の聞こえ方を実演する | 5分 |
| 自転車を実物で確認する | 5分 |
| 3か月後にもう一度確認する | 10分 |
| 1年後に面談する | 30分 |
ここには、準備や移動、通訳の手配の時間は入っていません。合計は現場ごとに数えてみてください。
それでも、1人が抜けるコストと比べれば、生活支援にかかる時間はずっと小さいはずです。
生活支援は、コストではなく投資です。
次の人は、必ず来る
2025年末の在留外国人は412万5,395人で、はじめて400万人を超えました。前の年から35万人以上の増加です。
そのうちベトナムは68万1,100人で、国籍別では中国に次ぐ2位です。技能実習と特定技能では、ベトナムがともに最も多い国籍です。
育成就労制度が始まれば、受け入れはさらに増えると見込まれています。
だからこそ、最初の1人でやったことを記録に残しておくことが大切です。
- 2人目は、説明の準備に時間をかけずに済みます
- 3人目は、先輩が説明してくれます
1人目にかけた手間は、次の人では繰り返さなくて済むのです。
では、何から始めればいいのか
全部を一度に教える必要はありません。むしろ、全部教えようとすると何も残りません。
この連載では、次の順番で書いていきます。
- なぜ「何度言っても直らない」のか(No.03〜05)
- 教える順番の決め方(No.06〜08)
- 最初の3日で伝えること(No.09〜10、自転車はNo.01)
- 最初の1か月で伝えること(No.11)
- 一度で終わらせず、次の受け入れにつなぐこと(No.12)
急いでいる方は、まず前回の「自転車の青切符が始まって半年。外国人材には「金額から」伝える」を読んでください。明日の朝から使えます。
まとめ
- 2027年4月から、育成就労制度で本人の希望による転籍が可能になる
- 条件はあるが、住みにくい職場からは人が出ていけるようになる
- 生活支援の作業はひとつひとつ短く、1人が抜けるコストよりずっと小さい
- 最初の1人でやったことを記録に残せば、次の人からは楽になる
次回は、この連載の出発点である「ゴミ出しが何度言っても直らない」問題を取り上げます。
連載「外国人材の生活支援」目次
- No.01 自転車の青切符が始まって半年。外国人材には「金額から」伝える
- No.02 2027年4月に育成就労制度が始まる。生活支援は定着率そのものになる(この記事)
- No.03 ゴミ出しが何度言っても直らないのは、教え方が下手だからではない
- No.04〜No.13 公開予定
この連載のもとになった本
この連載は、拙著『なぜ、ゴミ出しだけが何度言っても直らないのか? 悪いのは「教えたつもり」だった 外国人材の生活ルールが届く設計』(Kindle版)の内容をもとにしています。
本では、生活オリエンテーションの8時間をどの順番で配るか、最初の3日と1か月で何を伝えるか、そして先輩への引き継ぎや3か月後・1年後の確認まで、受け入れの現場で使える形にまとめました。本人にそのまま見せられる日本語とベトナム語の一言も、項目ごとに載せています。
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出典:出入国在留管理庁 育成就労制度Q&A、出入国在留管理庁 育成就労制度の制度概要、nippon.com 在留外国人が初の400万人超

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