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【外国人材の生活支援】No.04 「はい、わかりました」は同意ではない ― 教えたと伝わったの間にある5段階

寮の共有スペースで、外国人材の女性がゴミ袋を指さし、支援担当者がうなずいているイラスト ビジネス勉強会

「わかった?」

「はい!」

外国人材の受け入れ現場で、毎日のように交わされるやりとりです。そして、「はいと言ったのに、実際には違うことをしていた」という悩みも、同じくらいよく聞きます。

これは、相手が嘘をついているわけではありません。

この記事では、「はい」が理解の確認にならない理由と、「教えた」と「伝わった」の間にある5つの段階を紹介します。

「わかりません」と言いにくい理由

中心にあるのは、「面子(メンツ)」という考え方です。

ベトナムでは、周りからの評価や人間関係の中での体面が、行動に強く影響します。「わかりません」「もう一度教えてください」と言うことは、面子を傷つけることだと受け取られる場合があります。

特に、同僚や先輩がいる場では言い出しにくくなります。

全員を集めた説明会で「質問はありますか」と聞いても手が挙がらないのは、質問がないからではありません。その場では聞けないからです。

また、はっきり「いいえ」と言わず、黙ることで疑問や反対を示すこともあります。日本人には「納得している」ように見える沈黙が、実は「困っている」という意味のことがあるのです。

「わかった?」と聞かない

ここから、実務上の結論が出ます。

「わかった?」と聞いてはいけません。

この質問への答えは、ほぼ必ず「はい」です。それは嘘ではなく、その場の礼儀です。あなたを尊重しているという表明でもあります。

でも、理解の確認にはまったく使えません。

では、どうするか。やってもらうか、言い直してもらうのです。

  • 「明日のゴミ、どの袋に入れる?」と聞いて、実物を指さしてもらう
  • 「何時までに出す?」と聞いて、時計を指してもらう

この2つができれば、伝わっています。できなければ、まだ伝わっていません。

たったこれだけの違いで、確認の精度はまるで変わります。

叱るのは一人ずつ、褒めるのはみんなの前で

面子の考え方から、もうひとつ大事なことが言えます。

注意やアドバイスは、一人ずつ、個別に伝えてください。

全員の前で一人を注意すると、その人は面子を失います。すると、その後あなたに本当のことを言わなくなることがあります。困りごとや体調の変化といった、大事な情報が入ってこなくなるのです。

一方で、褒めるときはみんなの前で構いません。むしろ効果的です。

日本の職場でもよく言われることですが、面子を大切にする文化の人に対しては、この使い分けをいつも以上に意識してください。

「教えた」と「伝わった」の間にある5段階

もうひとつの落とし穴は、「教えた」という言葉そのものにあります。

私たちはよく「もう教えたよ」と言います。でも、この言葉が指しているのは、たいてい「話した」という事実だけです。

伝わるまでには、少なくとも5つの段階があります。

  1. 話した:こちらが口に出した、または文字にした
  2. 聞こえた:相手の耳に届いた、目に入った。騒がしい作業場での立ち話では、ここで止まることがあります
  3. 意味がわかった:単語と文の意味が理解できた。「分別を徹底してください」のような漢語の多い文は、ここでつまずきやすくなります
  4. やり方がわかった:何を、どこで、いつ、どうするかが具体的にイメージできた。ここには実物と場所が必要です
  5. 実際にできた:一度やってみて、うまくいった

「もう教えたよ」と言うとき、私たちは1段階目を指しています。相手が5段階目まで届いているかどうかは、確認しない限りわかりません。

一度言っただけでは、ほとんど残らない

記憶の問題もあります。

来日直後の数日間、彼らは膨大な情報を浴びます。寮の鍵、風呂の使い方、スマートフォンの設定、銀行口座、通勤経路、作業着、タイムカード。ここに、ゴミの分別と曜日と集積所の場所と袋の種類が加わります。

しかも、そのすべてが母語ではない言葉で説明されています。

あなたが海外に赴任した初日に、現地の言葉で3時間の説明を受けたと想像してください。何割覚えていられるでしょうか。

だから「一度言った」は、実務ではほとんど意味を持ちません。忘れる前提で、教える順番を設計する必要があります。

この「順番」の決め方は、No.06から取り上げます。

まとめ

  • 「はい」は同意ではなく、その場の礼儀であることが多い
  • 「わかった?」と聞かず、実物を指さしてもらう、言い直してもらう
  • 注意は個別に、褒めるのはみんなの前で
  • 「教えた」と「伝わった」の間には、話した・聞こえた・意味がわかった・やり方がわかった・できた、の5段階がある
  • 一度言っただけでは残らない。忘れる前提で設計する

次回は、張り紙が読まれない理由と、N5・N4の日本語で実際にできることを取り上げます。

連載「外国人材の生活支援」目次

この連載のもとになった本

この連載は、拙著『なぜ、ゴミ出しだけが何度言っても直らないのか? 悪いのは「教えたつもり」だった 外国人材の生活ルールが届く設計』(Kindle版)の内容をもとにしています。

本では、生活ルールを「どの順番で、どう教え、どう確かめるか」を、ゴミ・自転車・夜の音・病院・災害・お金まで一冊にまとめました。本人にそのまま見せられる日本語とベトナム語の一言も、項目ごとに載せています。

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