No.03では、ゴミ出しが何度言っても直らない理由を書きました。仕事のルールと違って見本も繰り返す機会もないこと、ベトナムで家庭ごみの分別が義務になったのは2025年であること、そして日本のルールは自治体ごとにバラバラであることです。
今回は、いよいよ具体的な教え方です。
分ける理由は「設備の都合」として話す
最初に、分ける理由を言葉にしてください。ただし、道徳の話にしないことが大切です。
「日本人はきれい好きだから」と言うと、相手は「自分は汚いと言われた」と受け取ります。面子の問題が起きます。
代わりに、設備の都合として説明します。
「ゴミは種類ごとに、燃やす場所やリサイクルする場所が分かれています。混ざっていると、決められた方法で処理できません。だから分けます」
処理の仕組みは自治体によって違うので、あなたの自治体の案内に理由が書いてあれば、その言葉をそのまま使ってください。設備の話として説明すれば、誰の人格も傷つきません。
教えるのは「その集積所のルール」
No.03で書いたとおり、日本には統一されたゴミのルールがありません。「日本ではこうです」と一般化した瞬間に、どこかで嘘になります。
だから、教えるべきなのはその集積所の、その曜日の、その袋のルールです。
4つの確認を、この順番で埋める
ゴミ出しに必要なのは、次の4つです。この順番で埋めてください。
1. 何の日か(種類から入る)
「水曜日は燃えるゴミ」ではなく、「生ごみを出す日は、水曜と土曜」と言います。相手の頭にあるのは手元のゴミであって、カレンダーではないからです。
2. どの袋か
指定袋がある地域なら、実物を見せて、色と大きさを目で覚えてもらいます。どこで売っているかもその場で伝え、できれば一度、一緒に買いに行ってください。
3. いつまでか(時刻で言う)
「朝早く」では通じません。「何時から」「何時まで」の両方を、自治体の案内から数字で伝えます。前の晩に出すことを禁じている地域なら、「前の晩には出さない」も必ず添えます。動物に荒らされると、大きな苦情につながるからです。
4. どこに出すか
地図ではなく、現地に連れて行ってください。
この4つが埋まれば、ゴミは出せます。
来日3日以内に、15分だけ集積所まで一緒に歩く
もう一段、具体的にします。持っていくものは3つです。
- 指定袋の実物
- 今日出せるゴミ1袋
- 本人のスマートフォン
現地に着いたら、次の順番で進めます。
- 袋を本人に置いてもらう
- ネットをかけてもらう
- 写真を3枚撮ってもらう(集積所の全体、看板、袋を置いた状態)
写真は本人の端末に残るので、忘れても見返せます。
帰り道で「次のゴミの日は、何曜日?」と聞いてください。答えられたら終わりです。答えられなければ、もう一度伝えて、帰ってから写真にメモを書き込んでもらいます。
この15分が、そのあとの3か月を変えます。
やってはいけない3つのこと
分別表を渡して終わりにしない
自治体の分別表はよくできていますが、日本語で漢字が多く、項目が数百あります。来日直後の人は開きません。
全種類を一度に教えない
最初に本人が覚えるのは、「生ごみ」と「それ以外」の2つで十分です。慣れてから、プラスチック、ペットボトル、缶、びん、紙と、1週間に1つずつ増やしていきます。
ただし、「それ以外」をまとめて集積所に出させてはいけません。 それは分別違反になります。寮の中に「それ以外」をためておく場所を決め、最初の2週間は、あなたか先輩が収集日に合わせて仕分けて出します。本人にはその場に一緒にいてもらいます。
電池やモバイルバッテリー、スプレー缶、ライターは発火の原因になるので、最初から別の置き場所にしてください。
袋の中身を人前で見せない
間違いを見つけても、人前で袋を開けて中身を示すのは避けてください。本人にとっては恥をかく行為です。個別に、あとで、静かに。「これは、こっち」と指さすだけで足ります。
そのまま見せる一言(日本語とベトナム語)
読み上げる必要はありません。画面を見せて、本人に指さしてもらってください。曜日や時刻は、あなたの地域に合わせて書き換えてから使ってください。
- このごみを、この袋に入れてください。
- Vui lòng cho rác này vào túi này.
- 収集日の前の晩には、ごみを出さないでください。
- Không mang rác ra điểm thu gom vào đêm trước ngày thu gom.
- 分け方がわからないときは、ごみの写真を私に送ってください。
- Nếu chưa rõ cách phân loại, vui lòng chụp ảnh rác rồi gửi cho tôi.
最後の一文が、実はいちばん効きます。迷ったときに聞ける先があると、捨てる前に聞いてくれるようになります。
まとめ
- 分ける理由は、道徳ではなく「設備の都合」として話す
- 教えるのは「その集積所のルール」
- 何の日か・どの袋か・いつまでか・どこに出すか、の順で埋める
- 来日3日以内に、15分だけ集積所まで一緒に歩き、写真を撮ってもらう
- 最初は「生ごみ」と「それ以外」の2つから。ただし「それ以外」は最初の2週間こちらで出す
次回は、夜の音の伝え方と、現場でよくある失敗7つ、最初の3日間の進め方を取り上げます。
連載「外国人材の生活支援」目次
- No.01 自転車の青切符が始まって半年。外国人材には「金額から」伝える
- No.02 2027年4月に育成就労制度が始まる。生活支援は定着率そのものになる
- No.03 ゴミ出しが何度言っても直らないのは、教え方が下手だからではない
- No.04 「はい、わかりました」は同意ではない ― 教えたと伝わったの間にある5段階
- No.05 張り紙が読まれない4つの理由と、N5・N4でできること
- No.06 全部教えるから何も残らない ―「生活が止まる順」で優先順位を決める
- No.07 生活オリエンテーション8時間の配分例 ― 90分×4回+60分×2回を4週間に分ける
- No.08 やさしい日本語の5原則と、避けたい伝え方3パターン
- No.09 ゴミ出しは4つの確認で教える ― 何の日・どの袋・いつまで・どこに(この記事)
- No.10 夜の音は「うるさい」ではなく「壁が薄い」と伝える ― よくある失敗7つと最初の3日
- No.11 最初の1か月で伝える、命とお金に関わること
- No.12 一度で終わらせない ― 先輩に説明役を渡し、引き継ぎを残す
- No.13 本の紹介(公開予定)
この連載のもとになった本
この連載は、拙著『なぜ、ゴミ出しだけが何度言っても直らないのか? 悪いのは「教えたつもり」だった 外国人材の生活ルールが届く設計』(Kindle版)の内容をもとにしています。
本では、生活ルールを「どの順番で、どう教え、どう確かめるか」を、ゴミ・自転車・夜の音・病院・災害・お金まで一冊にまとめました。本人にそのまま見せられる日本語とベトナム語の一言も、項目ごとに載せています。
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